【VERPAN】3daysofdesign 2025 スペシャルレポート Part1

デンマーク・コペンハーゲンにて6/18(水)から6/20(金)にかけて行われたデザインフェスティバル「3daysofdesign」に行ってきました。

数ある展示の中から、今回は開催地デンマークを拠点とするブランドを中心に、注目の展示を数回に分けてレポート形式でお届けします。

第1回は、Verner Pantonの作品を復刻・展開するブランド「VERPAN」をご紹介します。

 

3daysofdesignとは?

「3daysofdesign(スリーデイズオブデザイン)」は、デンマーク・コペンハーゲンで毎年開催されるデザインフェスティバル。名前の通り3日間にわたって行われ、インテリアデザイン、家具、ライフスタイル、建築、照明、テキスタイルなど幅広い分野のデザインに焦点を当てています。

同じく大規模なデザインフェスティバルである「ミラノサローネ」に比べると規模は小さいものの、北欧ブランドがより力を入れる傾向にあり、来場者にとっては展示をじっくりと快適に楽しめるのが魅力。街中の各所で開催されるパーティにも気軽に参加できるなど、3daysofdesignならではの親しみやすさと高密度な魅力があります。

 

VERPAN

VERPANは、1960-70年代に活躍したデンマークを代表するデザイナー、Verner Panton(ヴェルナー・パントン)が生みだした家具や照明を、現代に復刻するブランドです。

今回の3daysofdesignでは、VERPANのショールームにて、今秋発売予定の新復刻アイテムも含む、大規模な展示が行われていました。

 

▲ショーウィンドウには、2025年秋に復刻予定の《Wire Portable Lamp》が顔を覗かせます。ともに掲げられていたのは、Pantonの著書『Lidt om Farver/Notes on Colour』からの引用文:

“One sits more comfortably on a colour that one likes.”
(「人は、自分の好きな色の上に座ると、より快適に感じる」)

この言葉は、Pantonのデザインの中で色彩がいかに重要な位置を占めるかを端的に示します。

 

▲1階の広々とした空間では、白・グレー・シルバーなどの無彩色が基調に。あえて色を抑えた構成が、各アイテムのフォルムや質感を際立たせていました。

ウォールライト《Spiegel》は、アルミニウム製の無機質なフォルムながら、半球状のシェードによって拡散される柔らかな光が有機的な表情を映します。(1枚目)

螺旋階段の上に堂々と佇む《Moon》は、貝や扇のようにも見えるデザインが特徴で、10枚のリング状の薄い板が、絶妙にずれながら重なることで光を反射・透過し、見る角度によって表情を変えます。(2枚目)

 

▲同じく1階の別のスペースでは、照明デザインにおけるヴェルナー・パントンの最高傑作の一つとして名高い《FAN》シリーズがクラスター状に吊るされ、一つのフォーカルポイントとなっていました。ステンレス製リングと、貝殻の円形プレートによって構成されるこの《FAN》シリーズ。これはクラシカルなクリスタルビーズシャンデリアを再解釈したもので、力強さと同時にタイムレスな優美さを感じさせます。

 

▲螺旋階段を降りてまず最初に目に付いたのは、これもまたVerner Pantonの代表作である《VP GLOBE》シリーズ。2001年宇宙の旅など当時のSF映画から飛び出してきたかのような、オレンジと青のパーツが印象的な近未来的デザインは、時代の空気を内包しつつ現代でも確かな存在感を放ちます。

 

▲その横には、2025年秋に復刻予定の《Pantop》シリーズがずらりと並んでいました。このシリーズはペンダント、テーブル、ポータブルの3種類での展開で、Verner Pantonらしいバリエーション豊かな色使いは、空間に合わせて照明を選ぶ私たちの心をワクワクさせてくれます。

 

▲地下では家具と照明を合わせた展示も印象的で、こちらはその一つです。VERPANでは家具や壁装も復刻されています。ビビッドなカラーや曲線的・有機的なデザインはまさにミッドセンチュリーモダンが描いた“人間らしい豊かな暮らし”を想起させます。

 

まとめ

Verner Pantonという一人のデザイナーに絞ったワンデザイナーズブランドだからこそ、展示全体を通して思想や美意識が強く伝わってきました。

復刻というと懐古的な印象を持たれることもありますが、デザインが飽和した現代において、過去の名作に新たなカラーを与えて現代に提案するVERPANの姿勢には、むしろ前向きな創造性を感じました。

日本でよく見られる“木目調でナチュラル”な「北欧風」とは異なる、MontanaやHAYに通じるようなカラフルで実験的な側面も含めて、北欧デザインの懐の深さを体感できる展示でした。


次回は、Verner Pantonがデザインした《Flowerpot》の復刻でも知られる、デンマークのインテリアブランド「&Tradition」の展示をご紹介します。

 

Writer
HASHIMOTO

Elighting STAFF

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